PROFESSOR 教授紹介
国のエネルギー政策の未来を担う、
”二歩先”を目指した研究に取り組む
次世代のエネルギーマネジメントシステムを研究開発
2011年3月に発生した東日本大震災は、日本の電力需給についてあるべき姿を考え直す契機となりました。すでに、家庭で使用する電気を発電所で作るのではなく、太陽光発電などで各家庭において作り、使い、貯めるといった「電気の地産地消」の流れが始まっています。さらに、2015年7月に資源エネルギー庁が発表した2030年の電源構成は、全体の4割を太陽光や水力、風力といった再生可能エネルギーによる電気や省エネにより賄うとされています。
こうした変革には多くの課題がつきものです。例えば、省エネといっても消費者に我慢を強いる節電では長続きしませんし、自らの判断で行う節電には限界があります。また、再生可能エネルギーを多く導入するにあたっては、発電量の予測の難しさ、不安定さといった点が障害となります。そうした課題の解決を目指すのが、電力の供給側と需要側をネットワークで結んで情報のやりとりを可能にする「スマート・グリッド(次世代送電網)」の研究開発です。
我々は、スマート・グリッドの実証試験のために世界でも類をみない規模の実験設備を備えた、スマート社会技術融合研究機構(ACROSS)を設立しました。この機構では、家庭内の全ての電気機器をIoT(Internet of Things)化して電気エネルギーをコントロールするシステム「HEMS (Home Energy Management System)」の実用化に向け、59の企業と連携した研究を行っています。
産学連携の”場”で人を育てる
こうした研究開発を進めるにあたって留意すべき点は、「誰にとっての研究なのか」という視点です。
日本の産学連携は、異業種連携が活発でないという弱点を有しており、その成果が社会に還元されない場合があります。そこで、中立的な立場で人と企業、ソフトとハードをつなげる”ハブ”としての役割を果たし、多くの人の幸せかつ快適な生活に資する研究成果を生み出していくことが、研究機関としての大学が果たすべき、使命ではないでしょうか。
そして、この取り組みは教育機関としての大学が果たすべき使命も担っています。多種多様な企業が集まって共同研究する過程においては、それぞれの企業の強みや研究のノウハウを知ることにつながるためです。私一人で学生に対してできることには限りがあるからこそ、”場”で育てることを大切にしています。これから研究者を志そうと考えている皆さんには、その研究が社会にどう貢献することになるのか、という視点を持ち続けてほしいですね。

- 林 泰弘 教授
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- 早稲田大学 先進理工学研究科
- 電気・情報生命専攻/先進理工学専攻
- スマート社会技術融合研究機構(ACROSS)機構長
- 先進グリッド技術研究所
担当科目
- 電気エネルギーシステムと環境
- 先進電気エネルギーシステム
- 回路理論A・演習
林教授のページ
略歴
- 1989年 早稲田大学理工学部電気工学科卒業
- 1991年 早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了
- 1994年 早稲田大学大学院理工学研究科博士課程修了・博士(工学)
- 1994年 4月より,茨城大学工学部システム工学科助手
- 1997年 4月より,茨城大学工学部システム工学科講師
- 2000年 4月より,福井大学工学部電気・電子工学科助教授
- 2009年 4月より,早稲田大学先進理工学部教授
- 2009年 12月より,先進グリッド技術研究所長を兼任WEB SITE
- 2014年 7月より,スマート社会技術融合研究機構(ACROSS) 機構長を兼任WEB SITE
学会活動 + MORE + CLOSE
- 電気学会,IEEE(米国電気電子学会),CIGRE、電気設備学会など
- 電気学会 電力・エネルギー部門論文委員会 主査,編集委員会幹事
- KIEE(韓国電気学会) 電力工学部門編修委員
- 電気学会 スマートグリッドの実現に向けた電力系統技術調査専門委員会 委員長(2011年~)
従事業務 + MORE + CLOSE
- 電力系統利用協議会 中長期業務関連勉強会 委員
- エネルギー総合工学研究所 電力ネットワーク技術総合調査委員会 委員
- 経済産業省資源エネルギー庁 コストベネフィット分析検討会委員
- 経済産業省資源エネルギー庁 海外における連系線利用に関する調査委員
- 経済産業省資源エネルギー庁 分散型電源と系統安定に関わる技術検討会
- 経済産業省 次世代エネルギーシステムに係る国際標準化に関する研究会 委員(WG2主査)
- 経済産業省 スマートメーター制度検討会座長(2010)
- 経済産業省 次世代送配電システム制度検討会委員(2010)
- 経済産業省 次世代送配電システム制度検討会WG1委員Link
- 経済産業省 次世代送配電システム制度検討会WG2委員Link
- 経済産業省 総合資源エネルギー調査会 電気事業分科会「制度環境小委員会」委員Link
- 経済産業省スマートハウス標準化検討会座長(2011年)PDF
- 経済産業省スマートメーターインターフェースタスクフォース座長(2011年)
- 経済産業省 スマートハウスビル・ビル標準・事業促進検討会座長(2012年)Link
- 経済産業省 総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会 電力システム改革小委員会 制度設計ワーキンググループ委員(2013年)Link
- 経済産業省 電力・ガス取引監視等委員会委員(2015年)Link
受賞歴 + MORE + CLOSE
- 2002年 2006年福井大学工学部電気・電子工学科最優秀教員
- 2008年 電気学会 電気学術振興賞(論文賞)受賞
- 2014年 早稲田大学リサーチアワード(大型研究プロジェクト推進)
- 2015年 早稲田大学リサーチアワード(大型研究プロジェクト推進)
著書 + MORE + CLOSE
メディア + MORE + CLOSE
- 2022年10月13日 東日本旅客鉄道㈱「and E vol10」 ゼロカーボンに向けたエネルギー戦略「脱炭素化は環境政策であり経済政策でもある」Link
- 2015年11月26日 日経新聞主催 日経スマートシティコンソーシアム「キーパーソンインタビュー」Link
- 2015年10月27日 電気新聞 「電力監視委 4委員に聞く」
- 2015年9月28日 理系マイナビ 「スペシャル・インタビュー」Link
- 2015年7月10日 パワーアカデミー月刊誌「子供の科学」 8月号
- 2014年12月22日 AERA誌 ‘14.12.29-‘15.1.5合併増大号 「日本を突破する100人」Link
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2014年10月28日 YOMIURI ONLINE WASEDA研究特区
―プロジェクト研究最前線― 「情報・エネルギー・サービスの融合で社会をスマートに変革する」Link - 2014年7月27日 NHK・BS1 「Biz+サンデー」
- 2013年8月27日 TV TOKYO 「ワールドビジネスサテライト」
- 2013年7月29日 日経新聞主催 日経スマートシティコンソーシアム「キーパーソンインタビュー」Link
- 2013年6月5日 サイエンスチャンネル「日本再生 スマートグリッドへの挑戦」
- 2013年4月11日 NHKニュース おはよう日本Link
- 2013年3月5日 日経エレクトロニクス
- 2011年6月13日 共同通信社 Kyodo WeeklyLink
- 次世代スマートグリッド研究拠点(早稲田大学大学院入学案内より)PDF
- 2011年5月10日 朝日新聞掲載記事PDF
- 2011年3月27日 テレビ朝日「サンデーフロントライン」
- 2011年3月16日 テレビ朝日「そうだったのか!池上彰の学べるニュース」の用語解説「計画停電」監修
- 2011年2月11日 テレビ朝日「そうだったのか!池上彰の学べるニュース」の用語解説「スマートグリッド」監修
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2010年6月22日 YOMIURI ONLINE WASEDA研究特区
―プロジェクト研究最前線― 「次世代スマート電力網の構築へ向けて 国家プロジェクトを牽引する」Link - 2010年1月1日 電気新聞掲載記事PDF
- 読売新聞 キャンパスナウLink
主な解説 + MORE + CLOSE
これからのスマート社会と電気 | 林 泰弘 | 電気学会誌2013年12月号 創立125周年 特集記事「巻頭言」 (2013) |
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エネルギーマネジメントのためのモデリングとシミュレーション~ GEMSとHEMSの協調モデル ~ | 林 泰弘 | 日本シミュレーション学会・小特集, Vol.32, No.3 (2013) |
我が国におけるスマートグリッドの展望 | 林 泰弘 | 電気設備学会誌“特集 スマートグリッドの需要家側と供給側の全般・共通技術 1”, Vol.33, No.8 (2013) |
日本におけるスマートグリッドの動向 | 林 泰弘 | 情報処理学会, Vol.54, No.6 (2013) |
スマートグリッドの課題と展望 | 林 泰弘 | 日本機械学会誌, Vol.116, No.1133 (2013.4) |
これからのスマートハウスのエネルギー管理―デマンドレス・|ンス技術を用いた次世代HEMS― | 林 泰弘 | エネルギー・資源学会, Vol.34, No.4 (2013) |
東日本大震災以降のスマートグリッドのエネルギーマネジメント | 林 泰弘 | 電気学会論文誌B, Vol.133, No.3, pp.225-228 (2013) |
未来都市スマートシティ | 林 泰弘 | 学園誌『早稲田に聞け! 新鐘〔復興〕』,Vol.79 (2012) |
総論:スマートグリッドとテクノロジー | 林 泰弘 | 電気学会論文誌B,Vol.132, No.10,pp.678-679 (2012) |
スマートグリッド―賢い送電網― | 林 泰弘 | 早稲田学報,Vol.1192, No.4 (2012) |
スマートグリッドの実現を目指したシステム技術開発 | 林 泰弘 | 早稲田産学連携レビュー2012(朝日新聞出版編集) (2012) |
スマートグリッドとその実現への取り組み | 林 泰弘 | 石油学会 ペトロテック, Vol.35, No.1 (2012) |
スマートグリッドと制御分野への期待 | 林 泰弘 |
計測と制御 第51巻第1号(2012年1月号) 特集号『グリーンイノベーションと制御理論』 |
スマートグリッドが社会を変える | 林 泰弘 | 読売クオータリー,No.19 2011秋号 |
縁の下の力持から,発信力を持つ技術者へ | 林 泰弘 | 電気評論・巻頭言,2011年7月号 |
スマートグリッドを取り巻く動き | 林 泰弘 | 民事法研究会 L&T, vol52, No.7 (2011) |
スマートグリッドが切り開く未来 | 林 泰弘 | 早稲田オンライン・オピニオン(読売オンライン),2011.6.27 |
スマートグリッド概論 | 林 泰弘 | エネルギー・資源,Vol.32,No.1,pp.22-26(2011) |
再生可能エネルギー電源との調和に向けた先進グリッド技術の国内動向 | 林 泰弘 | 電気学会論文誌B, Vol.130,No.11, pp.928-931 (2010) |
「スマートグリッドを構成する重要技術の動向」総論・スマートグリッド技術の動向と展開 | 林 泰弘 | 電気評論・特集, 2010年11月号 (2010) |
スマートグリッドの国内動向 | 林 泰弘 | TEION KOGAKU(J. Cryo. Soc. Jpn.)Vol. 45 No.9・Cpp.410-416 (2010) |
「スマートグリッド導入の動向」スマートグリッドと国内導入の必要性 | 林 泰弘 | 電気協会報・特集, 2010年5月号, pp.7-11 (2010) |
分散型電源の導入拡大に対応した配電系統電圧制御の動向と展望 | 林 泰弘 | 電気学会論文誌B, Vol.129,No.4, pp.491-494 (2009) |